環境的要因(=運)は重要?「銃・病原菌・鉄」の要約と感想

感想

この記事はジャレド・ダイヤモンド著「銃・病原菌・鉄」について興味がある方に向けて書いています。

★こんな人におススメ★

  • 人やネットで見聞きして、「銃・病原菌・鉄」が気になっている人
  • 「銃・病原菌・鉄」(上)の内容を簡潔に知りたい人
  • 「個人の努力」だけではなく「環境(=運)」が重要であることを知りたい人
  • 人類史をより深く知りたい人

人類の1万3000年の歴史の中で、

ある文化は文字を持ち、金属製の道具を使い、産業を発達させた一方で、

とある文化は文字を持たない農耕社会を続け、また、ある文化は石器を使った狩猟採集生活をずっと続けきました。

この本では、「人類史は金属と文字を文字を持つ社会が、農耕社会や狩猟採集民族を征服することになりますが、その理由はなぜか?」ということを、解き明かしていきます。

「銃・病原菌・鉄」(上) の要約と感想

タイトルの「銃・病原菌・鉄」の由来

「銃・病原菌・鉄」は、技術的に発達した文化が、未発達の文化を征服するに至った、直接の原因を示しています。

「鉄の鎧」を身につけ「銃」で武装した人たちが、「皮の鎧」に身につけ「木製のこん棒」で武装した民族に打ち勝つことは想像に容易いと思います。

しかし、鉄の武装や銃だけでは、征服の歴史は成り立ちませんでした。

では、何が要因だったかというと「病原菌に対する免疫」が非常に大きなポイントとなっています。

 

象徴的な出来事が、スペイン人によるインカ帝国の征服です。

当時の記録によると、兵力差は、スペイン:数百人に対して、インカ帝国:8万人

いくらスペインが鉄製の武具や銃で武装していたとしても、この兵力差を覆すことは難しいように思われます。

しかし、事実として、スペインがインカ帝国を打ち負かしてしまいました。

ここで大きな要因として、鉄製の武具や銃の他に、当時ヨーロッパ人が持ち込んだ天然痘の流行が挙げられます。

天然痘の流行により、インカ帝国では実に人口の約95%もの人々が亡くなっていました。

さらに皇帝も天然痘で病死してしまったことから、国は後継者争いで内乱状態にあり、一致団結してスペインと戦うことができなかったのです。

 

ここまでで、タイトルである「銃・病原菌・鉄」の由来をご理解いただけたかと思います。

この書籍ではさらに掘り下げ、「なぜインカ帝国側が、先んじて鉄や銃器を発明し、航海術を発達させ、ヨーロッパを征服する結果とならなかったのか?」という究極の要因を考察しています。

インカ帝国の人々は、能力的にスペイン人より劣っていたため、先んじて技術を発達させることができなかったのでしょうか?

このような「能力差異」の意見は一般的な推測として挙がりがちですが、筆者は真っ向から否定しています。

そして、技術等の地域間格差が発生・拡大した究極的な理由を「大陸による環境格差」と結論づけています。

スペイン人がインカ帝国を征服できた究極の要因

「大陸による環境格差」とはすなわち「ユーラシア大陸が東西に長かった」ということです。これだけでは、全く意味が分からないと思いますので、順を追って説明します。

狩猟採集生活から農耕生活への移行

「食料生産」ができるようになる、ということがポイントです。

自然界には、人間の食用に適した食べ物はわずかしかありません。

樹皮のように食べられなかったり、毒があったり、栄養価が低かったり、捕まえるのに危険なものだったり・・etc

当然、自然界における1面積あたりに採取(摂取)できるカロリーはとても低くなっています。

これが、「食料生産」ができるようになると、どうでしょうか。

お米を育てる水田・野菜を植える畑などを想像してもらうと分かりやすいと思いますが、1面積当たりにおける採取(摂取)できるカロリーは飛躍的に向上します。

採取(摂取)できるカロリーが増加すれば、より多くの人を養うことができ、人口が増えます。

人口が多ければ、軍事的にも優位に立つことが可能です。

また、時間の使い方も大きく変わってくることもポイントです。

狩猟採集生活を営む人たちは、一日を多くの時間を獲物を探すことに費やしています。さらに近場で獲れる動物や木の実などが少なくなってきた場合は、別の場所に移動しなければなりません。

しかし、「食料生産」ができれば違います。

「食料生産」ができるようになれば、獲物を追って移動する必要がなくなるため、定住生活が可能になります。

定住生活が可能になれば、食料を貯蔵・貯蓄できるようになります。(狩猟採集民族と違い、移動する必要がないためです)

食料を貯蔵・貯蓄できるようになれば、「食料生産」に従事しない人々を養うことができます。

食料生産に従事しない人々は、時間を政治活動・刀剣や銃器等の製造技術の開発・文字の発明等に費やすことができます。また、職業軍人の存在も可能になります。

つまり「食料生産」の開始は技術や政治機構の発展スピードに大きな差を生み出したのです。

動物の家畜化

 

次のポイントは「動物の家畜化」です。

家畜は牛・羊・山羊・馬などがなじみ深いですが、肉や搾乳によって食用可能なことはもちろんのこと、鋤を引いて田畑を耕したり、糞が肥料にできる等、食料生産に多大な貢献をします。

また、毛皮などを衣服の原材料として活用できたり、荷物を持たせて一度に大量のものを輸送したり、騎馬等によって軍事面で優位に立つことが出来るなど、食料生産以外にも様々なことに役立てることができます。

さらに重要なポイントは、「動物の家畜化」は「人間の病原菌に対する免疫」にも繋がっているということです。

スペインがインカ帝国の征服に成功した大きな要因として「天然痘によって人口の約95%もの人々が亡くなってしまった結果、内乱状態にあった」ということは前述のとおりです。

そして、この天然痘は、もともとは動物に感染した病原菌が、突然変異によって人間に感染するようになったものです。(天然痘だけなく、インフルエンザや麻疹など、突然変異によって動物から人間に感染した病原菌は数多くあります)

動物の家畜化」は、人間に感染する病原菌の増加に繋がりましたが、それと同時に「人間の病原菌に対する免疫の獲得」の差も生み出しました。

「農耕生活への移行」「動物の家畜化」のハードル

それでは、どの地域でも「狩猟採集生活から農耕生活への移行」を行い、「動物を家畜化」すれば良かったのでは?と思うかもしれませんが、どちらもそう簡単ではありません。

なぜなら「作物化に適した植物・家畜化に適した動物」は非常に少ないためです。

つまり、「作物化に適した植物・家畜化に適した動物」が身近に存在していたか否かが、農耕生活へ移行や家畜化の大きなポイントになっていました。(作物化・家畜化することが難しかったり効率が悪い場合は、狩猟採集生活を続けた方がメリットが大きいためです)

では「作物化に適した植物」・「家畜化に適した動物」の特徴を見てみましょう。

「作物化に適した植物」に必要な条件

  • 大量に採取可能
  • 成長が早い
  • 種子を蒔いたり植えたりするだけで簡単に発芽する
  • 簡単に貯蔵できる

「家畜化に適した動物」に必要な条件

  • 必要とする餌が少ない
  • 成長が早い
  • 繁殖が容易
  • 気性が大人しい
  • パニックになりにくい
  • 序列性のある集団を形成する習性があり、まとめて飼ったり、従順させることが容易

以上のような特性を持つ動植物が存在していた地域は数少なく、食料生産が独自に開始された地域は世界で5か所だけとなっています。

究極の要因「ユーラシア大陸が東西に長かったから」

ここまで、「農耕生活への移行」「動物の家畜化」が、人口の増加・技術や政治機構の発達、病原菌に対する免疫の獲得に、大きな役割を果たしていることに繋がることを説明しました。

ではなぜ、「ユーラシア大陸が東西に長かった」ということが、ヨーロッパ人がアメリカ大陸や他大陸の民族を征服できたことに繋がるのでしょうか。

それは「農耕生活への移行」「動物の家畜化」の伝播速度に繋がるからです。

前述の通り、食料生産が独自に開始された地域は世界で5か所だけとなっています。

それ以外で食料生産を実施した地域は、すでに「作物化された植物」や「家畜化された動物」を取り入れる、または征服される形で、食料生産を開始しました。

ユーラシア大陸は東西に長かったため、(緯度が同じであれば)日照時間の長さの変化や、季節の移り変わりの変化のタイミングに大差がなく、「作物化された植物」や「家畜化された動物」の伝播が容易だったのです。

このため、他の大陸に比べて早い段階で、人口増加・技術や政治機構の発達・病原菌に対する免疫の獲得等が起こり、スペインによるインカ帝国征服に見られるような、他大陸の征服へと繋がったというわけです。

感想

2チャンネルの創設者であるひろゆき氏がおススメしているのを見て、本書を購入しましたが非常に面白い内容でした。

特に、人間は環境的要因に大きな影響を受けること、そして、そのような環境に身を置けるか(=運の要素が非常に大きい)という点は、新しい視点です。

 

著書は民族にフォーカスが当てられていますが、個々人においても同じようなことが言えるかもしれません。

ここからは、個人的な体験記となるので読み飛ばしていただいて構わないのですが、私は妻との会話で、「環境の差」を非常に大きく実感することがありました。

学生時代、妻は学校の宿題等は完璧にこなし、全国模試ランキングに掲載されるほど成績優秀でした。聞けば、家族は家庭円満で、規則正しい生活を行っており、学校も荒れていなかったとのことです。

一方の私は、父が精神病を患っていたことや、親族間の金銭トラブルにより家庭内は荒れ果てていました。また、学校もOBの先輩がバイクで乗り込んできたり、窓ガラスが割られたりと、妻からすると「信じられない」という環境でした。

当然、勉強するという習慣はつかず、学業成績は偏差値は30~40台。学内でも下から数えて1桁に入ることもままありました(たまたま運よく、高校3年の時に恩師と出会ったお陰で、ビリギャルばりの復活劇を果たすことができましたが・・)

 

仕事でも学業でもスポーツでも、成果が出ていない時は、「個人の努力不足」にフォーカスが当てられがちです。

しかし、本書の内容や自身の経験を踏まえると、「環境的要因(=運)」も非常に大きな要因だと感じます。

もちろん、「個人の努力」を否定するつもりは毛頭ありません。ただ、「個人の努力不足のせい」と盲目的にならず、広い視野を持って物事を見たいと思いました。

 

本記事は簡単な要約のため記述を避けましたが、本書では

  • 南北大陸への伝播の遅い理由
  • 現在は栽培されている農作物が、なぜ昔は栽培されなかったのか

等も十分に検証されていて読み応え十分です。

興味のある方は、ぜひ一読されることをおすすめします。

 

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